肝細胞がんとは

肝臓について

肝臓は腹部の右上にあり、成人で800〜1,200gと体内最大の臓器です。

肝臓の主な役割は、食事から吸収した栄養分を取り込んで体に必要な成分に変えることや、体内でつくられた有害物質や体外から摂取された有害物質を解毒し、排出することです。また、脂肪の消化を助ける胆汁もつくります。胆汁は、胆管を通して消化管に送られます。

肝細胞がんとは

肝細胞がんは、肝臓の細胞ががん化して悪性腫瘍になったものです。同じ肝臓にできたがんでも、肝臓の中を通る胆管ががん化したものは「肝内胆管がん(胆管細胞がん)」と呼ばれています。肝細胞がんと肝内胆がんは、治療法が異なることから区別されています。

ここでは、肝細胞がんについて解説します。なお、一般的には「肝がん」というと「肝細胞がん」のことを指します。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても初期には自覚症状がほとんどありません。医療機関での定期的な検診や、ほかの病気の検査のときなどに、たまたま肝細胞がんが発見されることも少なくありません。健康診断などで肝機能の異常や肝炎ウイルスの感染などを指摘された際には、受診するようにしましょう。

肝細胞がんが進行した場合は、腹部のしこり・圧迫感、痛みなどを訴える人もいます。

肝細胞および肝内胆管のがんと新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり32.2人で、男性に多い傾向があります。50歳代から増加を始め、80歳前後でピークを迎えます。

肝細胞がんの発生する主な要因は、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスの持続感染(長期間、体内にウイルスが留まる感染)です。肝炎ウイルスが体内に留まることによって、肝細胞の炎症と再生が長期にわたって繰り返され、それに伴い遺伝子の突然変異が積み重なり、がんになると考えられています。

ウイルス感染以外の要因としては、多量飲酒、喫煙、食事性のアフラトキシン(カビから発生する毒素の一種)、肥満、糖尿病、男性であることなどが知られています。最近では、肝炎ウイルス感染を伴わない肝細胞がんが増加してきているという報告もあり、その主な要因として、脂肪肝が注目されています。

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検査と診断

肝細胞がんの検査は、超音波(エコー)検査や、CT検査、MRI検査の画像検査と、腫瘍マーカー検査を組み合わせて行います。また、肝細胞がんとその他のがん、悪性か良性かの区別をするために針生検を行います。治療方針の検討には、血液検査で肝機能を調べたり、肝硬変の程度を評価するために内視鏡検査を行うこともあります。

治療

肝細胞がんの治療は、肝切除、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)、肝動脈化学塞栓(そくせん)療法(TACE)が中心です。また、肝臓の状態やがんの進行具合によっては、分子標的薬による薬物療法や、肝移植、放射線治療を選択します。

肝細胞がんの患者さんの多くは、がんと慢性肝疾患という2つの病気を抱えているため、がんの病期(ステージ)だけでなく、肝臓の障害の程度(Child-Pugh分類による評価)も考慮して治療方法を選択します。

引用:国立がん研究センターがん情報サービスリーフレット「肝細胞がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ」より